批判

2012.12.01
丹波春秋

 弊紙の衆院選特集「私と政治」で、ひきこもり支援者が語っていた。「最近の政治は、互いの批判ばかりしている。批判することで自分の存在をアピールする。日本全体がそうなっているように見える」。的確な指摘だと思う。▼他者を批判し、おとしめることで、自分の体面を保ち、自分の方がすぐれていることを示そうとする。少なからぬ識者が指摘しているように、現代社会にはそんな攻撃的な空気が満ちている。クレイマーが増えているのも、当然の現象だ。文句をつけた方が勝ちになるのが攻撃的な社会であり、今の世の風潮なのだから。▼政界でも同様の原理が働いているから、先のコメントのように「互いに批判ばかりしている」と映るのだろう。ただ、その批判は理路整然とした冷静なものよりも、扇動的にする方が世間の耳目を集められる。小泉元首相の「私に反対する者はすべて抵抗勢力」「自民党の古い体質をぶっ壊す」などは、扇動的な批判の典型だった。▼時の人である石原慎太郎氏が以前、瀬戸内寂聴氏との間で交換した往復随筆集『人生への恋文』の中で、瀬戸内氏がいみじくも「今の政治家に最も欠如しているのは『含羞(がんしゅう)』かもしれませんね」と書いている。▼含羞とは、恥じらいのこと。扇動的な批判に、恥じらいが忍びこむ余地はない。(Y)

 

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