信じがたい話だが、ひろさちや氏の本に「夏目漱石は、大学生になってはじめて、米が稲からとれるものだと教わったそうです」とあった。

2006.12.27
丹波春秋

信じがたい話だが、ひろさちや氏の本に「夏目漱石は、大学生になってはじめて、米が稲からとれるものだと教わったそうです」とあった。はじめて教わったということは、それまで知らなかったということだ。▼大学生になるまで稲穂を見たことはなかったのか。田んぼで遊ばなかったのか。それらは不明だが、田植えや稲刈りを一度もしたことがなかったのは明らかだ。丹波地方では今年もたくさんの小学生たちが田植え体験をした。この子たちは、漱石のような無知ではない。体験を通して米を知った。▼信じがたい話は現代にもある。講演で聞いた話だが、若い弟子を抱えている仏師が「最近の若者は共同作業ができない」とこぼしたという。弟子たちに仏像を運ばせたとき、ひとりの弟子がぱっと手を離したらしい。理由は「重たかったから」。▼突然に手を離すと、仏像が落ちたり、一緒に運んでいる仲間がけがをするかもしれない。容易に想像できることがわからない。それは、子どものころに木登りのような体験をしなかったためだという。自分の能力ではどこまで登れるのか、この枝に足をかけても大丈夫か。そうした見極めをする体験が欠けているせいらしい。▼5日から「トライやる」が始まる。体験にまさる学習はない。体験を通して、働くということをしっかり学んでほしい。(Y)

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