黒枝豆のシーズンになった。黒枝豆をさかなに丹波の地酒を傾ける。秋を味わう至福のひとときだ。篠山の各地で催されている味まつりでも黒枝豆はひっぱりだこの人気だが、これほど有名になったのは、まだ最近のこと。1988年に開催された北摂・丹波の祭典がひとつのきっかけになり、ブームが起きた。▼それに比べて、黒豆そのものの歴史は古い。寛政11年(1799)の丹波国大絵図に、丹波の名産として黒豆が紹介されている。江戸幕府に献上され、江戸中に丹波の黒豆が知れ渡ったともいわれている。さらには、黄門様で親しまれる水戸光圀も丹波の黒豆を召し上がったらしい。▼元禄11年(1698)、篠山から送ってきた黒豆を食したという記録が水戸に残っているそうだ。そんな歴史から見ても、黒豆は全国に誇る特産だ。▼黒豆を栽培し、地域特産物マイスターの称号を持つ篠山市の山本博一さんは、「手まめ、足まめ、小まめでないと豆はつくれません」と言う。苦労をいとうようでは、おいしい黒豆はできない。そんな農家の苦労が特産の歴史を支えてきた。▼光圀は、子孫のために九カ条の訓戒を残している。その一条は「苦は楽の種、楽は苦の種と知るべし」。苦労の大切さを知る黄門様はきっと、黒豆を食しながら農民の苦労を思いやったことだろう。(Y)