柳宗悦の「民藝とは何か」を最近読んだ。丹波焼を高く評価したことでも知られる柳は同書で、明治初めごろの丹波焼の塩壷を取り上げ、その美しさについてふれていた。▼それによると、丹波の窯はみすぼらしく、土の性質も上等ではないと、言ってのけている。しかし、そんな不自由があるから「人間の誤り」を封じ、丹波焼を美しくしているのだという。それは、貧しさが人間を良くするようなものとも書いている。▼貧しい環境が人を高める。いささか旧聞に属するが、そんな好例が夕張市の成人式だった。財政破綻した夕張市では、成人式への市の補助が全額カットされ、当初の資金は一万円のみだった。そんな逆風にあって、実行委員の若者が立ち上がり、資金集めに奔走。全国から多額のカンパが寄せられた。▼会場は、例年のホテルをやめ、使用料がかからない市民会館に変更。式の支出は、例年の半分以下になったそうだ。テレビで見た成人式の模様は、柳が言う「美を育てる根本的な要件」と一致していた。その要件とは、自然、謙虚、質素、単純だ。飾らず気取らず、ぬくもりのある手作りの成人式だった。▼財政破綻はごめんだが、夕張の若者の輝きは大いに見習いたい。それは、貧しい環境にあって美しい焼き物を作り出した先人からの私たちへの教えでもある。 (Y)