小林さんの書

2007.02.26
未―コラム記者ノート

 大路小学校に、宝塚市在住の小林昌江さんから書が贈られた。石川啄木の「ふるさとの山にむかひて」で始まる歌と、戦時中のことを振り返る文章が添えられている。 小林さんは終戦の前年、尼崎市から疎開し、同校に通った。テレビなどで戦争の特集を見たときに、当時のことを思いだして書かれたそうだ。 「どんなことを思い出しながら書かれたんですか」と聞くと、たった一人で見知らぬ土地で暮らしていかねばならなかったこと、しかし多くの思い出もできたことのほか、若者の出征を何回も見送ったこと、と答えられた。 特に見送った人が早い人で一週間ほどで白い箱の中に入って帰ってくるのを見るたび、子ども心に強烈な印象を覚えたそう。それを聞いた時、戦没画学生の遺作展「無言館展」を見た時の衝撃、喪失感を思い出した。自分と同じ年頃の男たちが、戦地に赴き、死んでいく。約六十年前は当たり前だった事実に胸がしめつけられるようだった。 啄木の歌を選んだのは、今も昔も変わらない三尾山を懐かしく思ってのことだそう。その三尾山のように、揺るがぬ平和を、と願ってやまない。 (西澤健太郎)

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