知人が「さようならお日様 こんばんはお月様」という名曲をCD化したので、沖縄であった発売キャンペーンに同行した。旅の思い出にと、ビデオカメラを回し、「音」集めを楽しんだ。 三線作りの名手・照屋政雄さんの仕事場にお邪魔して歌三線を聞かせてもらったり、民謡歌手の饒(よ)辺愛子さんのステージを見たり、40歳過ぎてからプロになったシンガーソングライター・石垣勝治さんのうたを記録した。 それと、まちの音。その場所でしか聞けない音を拾った。ビーチに打ち寄せるさざ波、「ケッケッケッケー」と鳴くヤモリの鳴き声、「朝は九時まで。お客がいれば昼まで開けてるさー」と笑うバーのママさんの陽気な声、青空切り裂く米軍機の爆音、バスの車内放送、三線教室の練習場の音…。住んでる人には当たり前の、生活に溶け込んだ音に耳を澄ました。 健康や幸せがそうだといわれるように、不思議に感じない、珍しいとも思わない事が、実は大切なものであるということがある。通常は無くして初めて気づくものだが、何も失わずに「大切な何か」「おもしろい何か」に気づくことができるのが旅人の視点。事件の少ないいなかで静かに暮らす人に光を当てるためには、地域で暮らす視点に加え、この視点も不可欠だと思う。と、遠出好きの自分を正当化してみたりして。(足立智和)