瓦屋根

2007.02.01
未―コラム記者ノート

 大学を出て帰郷し、はや4年半。丹波に対する新鮮さが失せ始めているなあと感じていたこの頃。女優の丹阿彌谷津子さん、銅板画家の丹阿弥丹波子さん姉妹とお会いして、外の空気を入れてもらった気がした。 2人はともに母とみゑさんが育った氷上町成松の生まれ。今回の親子展では、2人で約1カ月間丹波の森公苑に滞在していた。 取材のため、2人を乗せて車で森公苑から植野美術館へ向かう途中のこと。「バイパスではなくて十六町の山沿いの道を通りましょうよ」と丹波子さん。昔は石生から市辺へ抜ける道を「十六町」と呼んでいたのだそうで、旧道を通りながら「こんな立派な瓦屋根のおうち、もう東京にはないわ。高いもの」とおしゃべり。新鮮だったのは、2人が“いい”と言うのが一般的な現代の民家だったことだ。 ハウスメーカーの進出で、丹波の家もずいぶん変わってきた。しかし言われてみれば、こうしたメーカーの箱の上にもちゃんと瓦が乗っている。今私たちが郷愁を感じるのは、少なくなったかや葺き屋根だ。でももしかしたらいつか、瓦葺きが同じ存在になっていくのかもしれない。当たりまえ、の瓦屋根が何だか美しく見えた。 今年の新年号の特集テーマは「いなか」。読者の皆さんにも新しい発見があるといいなと思う。(徳舛 純)

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