友人から、自分のパソコンがコンピュータウイルスに侵入されたことを伝えるメールが届いた。彼のパソコン内にある電子メールアドレスに、勝手にウイルスを送りつけるという。ひどく慌てた友人は、「直接メールが届かなくても感染する」「○○というファイルを探して削除してくれ、それがウイルスだ」と指示してきた。 しかし、「メールが届かなくても感染する」とは、一体どういう仕組みなのか。腑に落ちないので、彼に電話した。すると、あの内容は間違いだったという。ウイルスの警告を装い大切なファイルを削除させる、悪質ないたずらメールに騙されたらしいのだ。かわいそうに友人は、訂正のメールを送るため、大急ぎで再びパソコンに向かった。 その時は彼を「あわて者」と茶化したが、一面では笑いきれない部分がある。パソコンの細かい仕組みなど、私も知らない。つまり、そこにどんな「悪さ」の可能性が潜んでいるのか分からないのだ。分からないので、何か言われるとそれについて憶測し、不安にかられ行動する。それが、今回のような笑い話で済めば良いが、そうでないことも多々あることは明らかだ。 ふと自分の部屋を見渡すと、テレビ、パソコン、雑誌等々、なんと正体不明の「分からない」ものに囲まれた生活であることか。彼を笑うのは、やはりよそう。(古西広祐)