「降りつもる深雪に耐えて色変えぬ松ぞ雄々しき人もかくあれ」。小泉首相は4年前自民党総裁選に打って出た際、敗戦翌年の昭和天皇の歌を引用した。長らく異端視されてきた「郵政民営化」で圧勝し、まさにこの歌に酔う心境だろう。▼「郵政民営化こそすべての改革への入り口」と有権者をひきつけ、「改革を止めるな」と民主党の『お株』を奪ってしまった。天才的な戦略の勝利である。▼しかし、記者会見に立った小泉さんの顔は「笑いが止まらない」どころか、緊張でこわばっていた。作戦があまりに当たり過ぎ、「大変なことになった」と思ったのではないか。なだれのように議席が増減するという小選挙区制の効果。なりゆき次第では、次の選挙で大逆転される可能性だってある。▼郵政民営化は実現しても、それこそ『本丸』の年金、社会保障、財政改革への道筋については何ら見通しがついていない。憲政史に名を残して1年後にやめていくのはかっこ良いかもしれないが、膨らみ上がる国の借金はそのままだ。▼自民党の議員団には女性が増え、有能な人材が加わった。それでも「これまでとは違う何かをやってくれそう」との期待の反面、「本当に国民の気持ちを汲み上げてくれるのか」という不安は根強い。気まぐれな無党派票はすぐまた動くことを肝に銘じてほしい。(E)