1年前、マラソンランナーの野口みずきさんに出会った。野口さんのコーチをしている丹波市山南町出身の廣瀬永和(ひさかず)さんを取材したときに、出会う機会を得たのだ。小柄で、余分な肉をそぎ落とした体。そんな第一印象だった野口さんが、ベルリンマラソンで2時間19分12秒の日本新記録を出した。▼廣瀬さんから興味深い話をいくつか聞いた。そのひとつは、野口さんの強じんな内臓だ。長時間、走ると内臓も疲労するのが普通。40キロを走り終えたあとは、食欲がわかない。しかし、野口さんは30分もすると、「お腹がすいた」というそうだ。▼性格的にもマラソンに向いている。ランナーに囲まれると駄目なタイプで、トラックを走ると外に出てしまう。その点、ロードだと、自分でレースが組み立てられる。マラソンを始めるまで国内でも無名だったのが、世界トップのランナーになった。▼廣瀬さんも元マラソンランナーで、夢は、自分の自己ベスト2時間18分55秒を野口さんに破ってもらうこと。ベルリンではその夢はかなわなかったが、廣瀬さんは「気象条件が良ければ記録を破っていた」と言い、「時間の問題です」とほほえんでいた。▼野口さんは、廣瀬さんについて「お兄ちゃんみたいな存在」と評していた。太い絆で結ばれた2人は、次の北京五輪での2連覇をめざす。(Y)