丹波市とモミジ

2007.03.28
丹波春秋

 「丹波市の木」がモミジに決まった。高源寺や円通寺、石龕寺など市内にはモミジの名所が多いことが理由らしく、丹波市を代表する木として申し分がない。▼「秋山の木の葉を見ては 黄葉をば 取りてそしのふ」(額田王)。この歌は、春と秋のどちらがいいかという議論が宮中で行われたときに、「秋の方がいい」という趣旨で作られた。この歌の「黄葉」は「もみつ」と言い、モミジという言葉のもとになったという。▼「奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋は悲しき」(猿丸大夫)という歌もある。「モミジ」のほかに「鹿」もキーワードになっているが、国語学者の金田一春彦氏は「日本の和歌で、獣を題材にしたものはまれにしかないが、シカだけは例外だった」という。シカが愛されていたことの証だろう。▼宗教的にもシカは春日神社の神使いとされ、崇拝された。ただ、そんなシカも今では厄介者扱いされている。兵庫県ではシカによる被害が年間10億円を超すらしい。この対応として青垣に県森林動物研究センターがオープンすることになった。▼シカをはじめとした野生動物の被害対策や効果的な保全を進める拠点となる。全国でも珍しい施設で注目を集めているらしいが、この点でもモミジは丹波市の顔だといえる。シカの肉を俗に「モミジ」というから。 (Y)

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