車いすの画伯

2007.05.24
未―コラム記者ノート

 車いすの画伯尾松正憲さんに会うのは2回目だった。篠山市乾新町のカフェで開かれている作品展の取材。30年来のつきあいという支援員の女性も同席してくださった。 尾松さんは脳性まひの障害で言葉が出せないが、こちらの問いかけに手先と表情で「OK」「違う」と返答。通じない場合は、メモ用紙を取り出して、左手の指に鉛筆を挟んで要点を書いてくれる。力強い目を見ながら、話が弾んだ。 6年前に施設を出て、県住で1人暮らしをしている尾松さんは、地域で暮らしたいと願う障害者の先鞭者でもある。立つことはできないし、指も自由に動かせるわけではない。移動は指の関節を押しつけるようにして行い、食事はヘルパーさんの支援を受けているという。外出にも積極的な尾松さん、昨年は好きなクジラを見に四国まで行ったそうだ。48歳でローマ字を覚えたとうれしそうに話してくれた。 支援員の女性が「絵を始めて今の先生に出会ってから自信がついて、行動も変わりましたね」とおっしゃっていた。障害や年齢にとらわれず、好きな絵に打ち込んだことで、大きな扉を開けたのだと思った。(徳舛 純)

関連記事