桑江先生の話

2008.04.21
未―コラム記者ノート

 県立柏原病院の小児科を守る会の丹生裕子代表がシンポジストを務めた「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」で話をされた桑江千鶴子・都立府中病院産婦人科部長の言葉に目頭が熱くなった。「母体死亡を0にできないからと言って衆目の眼前で逮捕され、拘留されなければならないのか。そんな危険な仕事につき、自分の生活や人生、家族を犠牲にして働き続けることを選択する人が少なく、現場を立ち去る医師に対して私は責める気持ちにはなれない」。涙声だった。 産婦人科医は、絶滅すると言われている。長時間労働、低賃金という労働環境が1つ、より大きな原因が、訴訟の増加と警察・司法の介入だ。 桑江氏によると、ここ10年で出生数の8%減に対し、分娩を取り扱う施設は32%減った。志望者は減り、毎年180人ずつ辞めている。女医が多いが、医師になってから10年後にお産を扱い続けている女医は半分と言われる。産科崩壊は、日本の医療が進む道を先取りしているとされ、今日の問題が凝縮されている。 国民が、医師の心を折った―。これが医療崩壊の最大の原因と考える。(足立智和)

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