県立病院から当直応援 柏原病院再生プラン

2008.08.07
丹波の地域医療特集

 県立柏原病院再生対策本部 (本部長=黒田進県病院事業管理者) が5日、 県立柏原病院再生プランを発表した。 医師確保策では、 すでに明らかになっていた 「神戸大学から派遣を受ける」 と、 新たに 「他の県立病院から当直応援を受ける」 などの案をまとめた。 会見で黒田本部長は、「出血を止めるための当面の対応。 医師確保と経営改善は表裏一体。 診療機能を充実させて患者を増やしたい」 と話した。
 再生本部は、 内科を増やし、 常勤医不在の脳神経外科、 整形外科医らの確保をめざす、 とした。
 医師確保策の1つ、 秋から実施を予定している神戸大との人材育成プログラムは、 大学と県とで詰めの協議をしている。
 他の県立病院からの応援は、 最高で週2日。 1度に2人ずつの派遣を要請しており、 早ければ8月中に始まる。 常勤で勤務する内科専攻医 (3―5年目) の派遣も、 要請している。
 医療連携の強化では、 柏原赤十字病院との一体的運営に向けた連携強化を進める。 両病院で月2度、 症例検討会を開く。 地域医療確保対策圏域会議などを通じ、 他の医療機関との再編・ネットワーク化を進める。 医師会との連携も強化する。 また、 県立病院群からの応援医を得て、 救急患者を今より受け入れられるようにする。
 医療を支える機能の再構築として、 先端医療機器を整備・充実。 女医が勤務しやすい環境づくりの1つとして、 近隣の保育園で子どもを受け入れられるよう調整する。 心臓カテーテル、 内視鏡などの分野で専任ナースを育成し、 医師の業務軽減をはかる。 患者数の状況、 診療体制などに応じた人員の適正化、 県立病院間などの職員人事交流なども推進する。
 同本部は、 今後も月に1回程度、 会議を開き、 進捗状況を確認する。 再生プランに盛り込まれた案は、 年度内に全て着手し、 成否を見る。
 同病院は、 医師不足により患者が減ったものの、 職員の削減が進まず、 昨年度は約15億円の赤字を計上。 経営改善と診療機能回復を目指し、 6月に再生本部が設置された。 6月に県が公表した行革プランでは、 今年度の同病院の赤字を10億円強と見込んだ。 しかし、 整形外科の休診、 眼科の入院休止などにより、 昨年度より患者が減る見通し。
 黒田本部長は、 「何も手をつけなかったら、 昨年度以上の赤字が出る。 再生プランの実施により、 赤字幅を昨年度より圧縮したい」 と話し、 酒井國安院長は、 「現場として努力したい。 みなさんの理解と協力を」 と述べた。
 また、 神戸大学が提案した県立柏原と柏原赤十字の統合新病院構想について黒田本部長は、 「県立柏原をどうするという以外のことを言える立場にない」 と、 改めて県病院局として取り組む考えがないことを示した。 会見に同席した太田稔明県病院局副管理者は、 「知事部局の地域医療確保対策圏域会議などで再編ネットワーク化の検討がされる。 そこで議論されることを希望する」 と述べた。
 同病院は、 5年前に43人を数えていた常勤医が今年8月1日で18人に減少、 昨年度の患者数は、 外来が約7万7000人 (ピーク時比約39%)、 入院が約5万人 (ピーク時比45%) と減少している。 ベッド数も結核を含め最大363床あったものが、 今年4月から146床に減床している。

■解説 「仏作って…」の懸念

 県立柏原病院再生対策本部がまとめた再生プラン。 病院局単体での計画立案には、 無理があった。 病院局は、 1人の医師も動かせず、 赤字の要因になっている医師以外の職員給与引き下げなどの大ナタがふるえない。 手も足も縛られた状態で練られた計画は、 実効性に欠ける。 医療行政担当で、 県養成医の派遣や病院機能分担などを管轄する県健康福祉部を再生本部に入れないのは、 県の甘い認識の現れだ。
 再生本部は医師を増やす 「計画」 をまとめることはできる。 しかし、 実行するとなると、 再生本部長の県病院事業管理者にしても、 できることは各病院への 「要請」 を除けば、 ほとんどない。
 神戸大から5人を招く人材育成プログラム。 県立柏原病院は、 大学に5人全員を内科でと要望した。 しかし、 同大は、 県立柏原と柏原赤十字の統合が先決で、 それがなければ内科は出せないとしている。 酒井國安院長は、 言った。 「誰も来てくれないよりはいいが、 内科が増えないと期待に応えられるような成果は出ない」。 懸念していた 「仏作って魂入れず」 が現実のものになろうとしている。 今回の再生計画全体が同じ道をたどらないか、 非常な懸念を覚える。
 他の県立病院からの応援も、 救急当直以上は現時点では難しく、 応援に来た医師が急患を受けても、 日中に勤務する医師が増えなければ、 翌朝の転院を余儀なくされる。
 さらにもう1つ、 忘れられた視点がある。 再生本部は今在籍している18人の常勤医が、 続けて診察にあたる 「前提」 で計画を立案した。 この再生計画は、 一日千秋の思いで援軍を待ちわびている勤務医にとって、 希望を見出せる中身だろうか。 この点でも、 県は認識が甘いと言わざるを得ない。 甘い認識のツケは、 市民と医師が払わされる。 (足立智和)

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