未曾有の金融危機

2008.10.16
丹波春秋

 「京(けい)」という計算単位は「兆」の1万倍、「億」の1億倍。今、世界の金融市場に出回っている金が2京2千兆円にのぼるという。▼読み方すらおぼつかなかった数字が俄然現実味を帯びてくるが、問題は、その規模が実体経済の4倍にも膨れ上がっているという点。これが、アメリカ発の未曾有の金融危機の要因だ。▼大学生は入学と同時に授業料のローンを組む。卒業し就職するなり、返済が待ち受けている。勿論、日常の買い物もクレジット・カード。「低所得でもOK」という住宅ローンが横行し、価格が上昇する間はブームを起こしたが一転、不良債権の山となった。▼根はもっと深い。家計も貿易も政府収支も赤字だらけの借金王国アメリカを最大の客にすることで、欧州も日本も新興国も景気を支え、稼いだ金は再びアメリカに注ぎ込んで、互いに経済を回転させてきた。ドル紙幣がどんどん印刷され、「京」の規模に。▼「こんな仕組みが長続きするはずはない」と多くの人が気付きながら、危機が現実に到来するまで手を打つことはできなかった。各国の協調体制によってもいつ収束するか、予測はつかない。これまでのようなアメリカ中心の構造が変わらない限り、根本的な解決は難しいだろう。大統領選に際し、米国民自身も賢明に考えてほしい。(E)

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