高をくくらず

2009.05.14
未―コラム記者ノート

 今、読んでいる本の中で、いつまでも頭に残る一文がある。「世の中の不幸の大半は、誰かが高をくくっていたことが原因。戦争も、みんなが高をくくってるうちに起きたんだ」。悲しいかな、「なるほどそうかも」と思わざるを得ない。 「高をくくる」とは、大まかに言えば、「たいしたことはないだろう」と見くびること。きっと事故はしない、たぶん会社は倒産しない、おそらく人は足りている―。生活のそこかしこにまん延している考え方と言えるだろう。 実感のわかない出来事に対して危機感が薄いのは当然かもしれない。目の前で不幸が起きない限り、現実感がわかないのだろう。 おりしも9日には国内初の新型インフルエンザが確認された。しかも大阪の高校生が、だ。遠い国の出来事だったことが、一瞬で近くまでやって来た。このスピードを考えれば、いつ丹波地域で感染者が出ても、何もおかしくはない。 そんな中、絶対に高をくくってはならない職業の一つが、私たち新聞記者だ。何を言われようと、警鐘を鳴らし続ける―。何気ない小説の一文に決意を新たにした。(森田靖久)

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