不況知らずの化粧品

2009.08.12
丹波春秋

 20年近く前、モンゴルに行った。空港の玄関に牛が寝そべり、首都ウランバートルにもろくなホテルがなかった時代。4階建てのデパートもみすぼらしかったが、黒山の人だかりの売り場が2カ所あった。▼ひとつはキャンデー売り場。そしてもうひとつは化粧品。今むこうから来る少女らとは違い、垢ぬけしない女性たちだったが、販売員にメークしてもらいながら、実に真剣な目で鏡に見入っている。「開放体制は、女性のおしゃれから」と実感した。▼先日の日経紙に「なぜ化粧品だけ不況知らず」という記事が載っていた。あるアンケートによれば、不況で「生活費を減らす」女性は45%もいるが、「化粧品の出費を減らす」人は3割以下で、7割超がこれまでと同等かそれ以上出費すると回答したという。▼要因はつまるところ、「化粧は仕事を初め自らを強める武器。難局時ほど必須。また女性は外見を飾ると前向きな気持ちになれる。自分を活き活きさせてくれる投資は惜しくない」ということらしい。▼ならばいささか我田引水ながら、新聞などもまさしく同じ効用をもたらす商品。そのポイントを心得さえしておけば不況にたじろぐことはないと、意を強くした次第。それにしても、今頃は相当に垢抜けしたに違いないウランバートルのデパートの化粧品売り場を再訪したい。(E)

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