冬の使者コハクチョウが篠山川に飛来した。人を恐れる様子もなく、水中に長い首を突っ込んで水草を食べたり、くちばしで羽毛をついばんで羽づくろいをするなどの仕草を見せている―。 冬鳥として日本各地に渡ってくるが、篠山への飛来は大変珍しいこと。丹波野鳥の会代表の梅津節雄さんによると、近隣では小野市が飛来地として有名で、毎年数10羽の群れが観察できるのだという。私が「灰色がかったのが1羽いるだけ」と話すと、梅津さんは「元来コハクチョウは家族単位で行動するので、おそらく迷子の幼鳥でしょう」と解説。「両親や仲間とはぐれ、さぞかしさみしい思いをしているのだろう」と眺めていると、集まってきた小さなカモの群れにまじって、にぎやかにエサの雑草などを食べていた。その光景を目にし、そんな思いは取り越し苦労だったと気づかされた。 シベリアから日本までの距離、約4000キロ。この地球規模の大移動をわずか2週間でやってのけてみせるスタミナが、小さな体のどこに詰まっているのか。野生の神秘、たくましさにはいつも驚かされ、感動を覚える。 (太治庄三)