在宅死を考える

2010.03.01
未―コラム記者ノート

 いちじまライフネットの在宅死を考える講演会で講師を務めた、尼崎市の開業医・桜井隆さんが、こんな話を披露した。在宅で診ていた90歳過ぎで認知症のある高齢者のおばあさんの具合が悪くなったので、家族が救急車で病院へ運ぼうとしたが、家族と相談して、家で看取ることにした。家族に見守られながら、その人は息を引き取った、と。「そうしたいし、そうしてもらいたい」といった感じで、うんうんとうなずく聴衆の頭を最後尾からながめていた。 先月、近くに住んでいた本家の祖父が97歳で亡くなった。 昨年の夏、畑で倒れていた祖父を助けた。顔は日に焼けて赤くなり、体は熱くなっていた。部屋に運び、ベッドに寝かせて氷で冷やした。119番通報が頭をよぎったが、やめた。結果、事なきを得た。 救急車を呼ばなかったのは、「大丈夫だろう」という「勘」からだったが、もし、そのまま息を引き取ったとしても、そう悪い死に方ではないように思えた、というのも理由だ。家で死ねる方がうれしいんじゃないかと、不遜な孫は考えた。 現代人の多くは、病院で死ぬ。それが幸せなのか、考えている。    (足立智和)

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