先日、三田市で開かれた写真家、宮崎学さん(長野県)の講演会に参加した。生き物からの視線で人間社会を見つめた写真表現が持ち味の宮崎さん。写真界の直木賞と呼ばれる土門拳賞なども受賞。野生動物の「かわいい」「きれい」だけを写す日本の動物写真界を嫌い、自らを「自然界の報道写真家」と名乗る。そんな宮崎さんが披露する「黙して語らない自然」からのメッセージは刺激的で、説得力があった。 「特定の野生動物が激増している」と切り出し、「長野では絶滅危惧種のクマでさえ増えている」と話す。その一因を降雪時にまく融雪剤「塩化カルシウム」にあると分析。山野においては希少な塩分が大量にまかれ、植物や土壌に染み込んだものを野生動物が間接的に摂取。「サプリメントのように作用して体を健康にし、個体数の増加につながっている」など、ほかにも様々な持論を展開。いずれの発言も独自の視点と豊かな経験から得られたもので力強かった。 私も記者という肩書きを持つ以上、宮崎さんのような物事を読み解く観察眼を養わねば、と痛感した。(太治庄三)