多可町のベルディーホールへ、佐渡裕指揮・兵庫芸術文化センター管弦楽団の演奏を聴きに。「英雄」などベートーヴェンばかり3曲で、アンコール曲は唱歌「故郷」。にわか作りの合唱団120人が2階席からオケに合わせた。▼合唱団は地元の色々なサークルを集めたもので、2カ月前から分散練習。筆者は何回も通いながらも「5分間の唱歌のために、そんなに練習?」と思っていた。▼当日、直前の合同リハーサルで佐渡さんが言うには、「ベートーベンの曲はどれも長く、アンコール曲は選びにくいので『故郷』を思いついた。でも同じ演目で8公演(芸文ほか計6カ所)する中で、聴衆が合唱団を作って下さったのは、ここだけです」。▼管弦楽団は世界の若手演奏者を集めて5年前に発足。その年、芸文ホール以外へ初めて遠征したのがベルディーホール。「団員がまだまだ一つにまとまっていなかった時期、お客さんが大変熱く聞いて下さり、心を一つにするきっかけになった。思い出深い場所です」。▼そして、「公共ホールにとって大切なのは、町の人たちのためにどういう存在であり得るか、ということ」とも。同ホールには、10月1日に毎年必ず来て下さる加藤登紀子コンサートほか足繁く行っているが、まさに佐渡さんの言葉通りの運営に、人々が呼応しているようだ。(E)