柏原にニュースポーツの「囲碁ボール」が生まれて今年で20周年になる。弊紙の読者の間でも、プレイをした人は多かろう。一発逆転のスリリングな展開もあり、なかなか妙味がある。▼思想家のカイヨワが示した「遊び」の分類に従うと、囲碁ボールは「競争」と「偶然性」を併せ持っている。得点や技を競い合う競争の要素のほかに、じゃんけんやサイコロ遊びなどのように偶然性を楽しむ要素が囲碁ボールにはある。ボールが運良く穴に入って大逆転、というのはまさしく偶然性の面白さだ。▼遊びを研究したことで有名なカイヨワは、遊びとは、非生産的なものであり、生活上、どうしてもなくては困るものではないとも指摘した。では、なぜ人は遊ぶのか。「ホモ・ルーデンス」(遊戯的人間)という言葉があるように、遊びこそが人間を他の動物と分かつものであり、人間であることの証だからだ。▼その説によると、芸術やスポーツをはじめ、政治や法律、学問なども遊びの精神から生まれたという。まさに『たかが遊び、されど遊び』だ。▼囲碁ボール普及会では、阪神大震災の被災地に囲碁ボールのセットを贈ったように、東日本大震災の被災地にも、可能ならば贈りたいという。囲碁ボールの遊びを通して被災者が和む日がいつか来ることを願う。(Y)