衣替えの季節。これから暑さが増してくるが、節電が求められる今年の夏は、ひときわ暑い夏になりそうだ。どうすれば暑さを乗り切れるか。昔々の中国の僧も悩んだようで、「こう暑くてはたまりません。どうしたら避けられますか」と、師に聞いた。▼「なぜ暑くも寒くもないところへ行かないのだ」と師。僧が「どうやって行くのですか」と聞き返すと、師は「暑いときには暑さになりきりなさい」と答えた。▼「心頭を滅却すれば、火おのずから涼し」。織田信長の軍が恵林(えりん)寺を焼いたときに、快川(かいせん)国師が唱えた言葉として知られるが、この言葉の出典となっている漢詩も、夏の暑さを乗り切るこつを説いたものだ。▼暑い盛りなのに、悟空(ごくう)上人は、破れ衣をまとい、門を閉めて陰もない部屋で坐禅をしている、という意味の詩に続いて、「心頭…」となる。火すら涼しいという境地になるには、心頭を滅却すること。それはすなわち「暑いときには暑さになりきる」ことなのだ。▼暑さから逃げられない。進んで暑さに同化することで、暑いと感じなくなる。「暑さになりきる」は本来、生死の悩みなどの処し方を説いたものだが、言葉そのままに解釈し、夏の暑さを乗り切りたい。精神修養と覚悟を決め、震災被災者に寄り添って。(Y)