福島からの便り

2011.07.14
丹波春秋

福島県相馬市の漁協からチリメンジャコが届いた。いわき市の知人、Sさんの手紙が添えられ、4月に被災のお見舞いに行ったお礼だった。彼の仕事はコンピュータのシステム開発。会社の建物や家は大丈夫だったが、主な得意先が漁協なので、ピンチにさらされている。▼ジャコは昨年に加工した在庫品とのこと。きめが細かく、美味しく頂いた。でも、「福島では地元産品を贈答するのに、相手が放射能のことを気にされるのではと、余計な配慮をしなければならない。『地元のブランド品です』と、自信を持って差し上げられないのが悲しいです」。▼漁は始めるばかりになったが、流通先のことを考えると関係者は気が重い。Sさんらは、何万人という東電生協の組合員に基準値をクリアした魚を直販しようと理事長らにかけ合い、「出来るだけ要望に応えたい」との返事をもらっているという。▼「福島市の知り合いの話では、『放射能から孫を避難させる』という嫁と、仕事を離れられない息子との口論が絶えず、家族関係に亀裂を生じているそうです。原発は人間の心にまで深刻な影を落としているのです」。▼折りしも南相馬市で、「足手まといになるので、私はお墓に避難します」との遺書を残して自らの命を絶った93歳の老女の話が報じられた(9日号毎日)。(E)

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