危機的状況からはまったく脱してはいません―。先日、篠山市で開かれた「原発のウソと真実」と題して開かれた小出裕章氏の講演会の中で語られた一言。原子力研究の第一線の科学者から、改めて現状の厳しさを聞かされ、分かってはいたが、やはりがっくりときた。
ネット上では前々からささやかれていることだが、小出氏も「4号機は特別な壊れ方をしており、使用済み燃料プールも壊れている。『耐震補強工事をした』と東電は言っているが、強い放射線が飛び交う中で、そんなことができるわけがない。打つ手なしの危機的状況だ」と話す。要するに建物倒壊の可能性を示唆しているのだ。倒壊してプールから使用済み燃料棒が屋外へ転がり出てしまうと、人類史上経験のないレベルの放射能汚染が発生する事態となる。
私には、氏の言葉が「世界は変わってしまった。覚悟を決めましょう」という風に聞こえた。幼い子どもを持つ親としては、どうしてもそんな気持ちにはなれない。あまりにひどい原発に関する真実を聞かされ、ウソであってほしいと心から願った、そんな講演会だった。(太治庄三)