ゆめタウンポップアップホールで2月18日午後2時から、岩手県宮古市立田老診療所長、黒田仁さんの講演会が開かれる。震災後、「まちで唯一人の医師」として脚光を浴びた。多くのメディアは、被災者に寄り添う姿を映画の「赤ひげ」と重ね合わせ、理想の医師像の一つかのように報じていたが、震災前から面識があり、黒田さんの苦しい胸の内を聞いたことがある身としては、「美談」扱いを複雑な気持ちで見ていた。
黒田さんは、1人で医療をしたかった訳ではない。田老への赴任も、僻地医療に燃え盛る情熱を持って飛び込んだ、というのとは少し違う。着任するはずの医師が約束を反故にした、黒田さんを田老に引っ張った医師が黒田さんを残して退職した、黒田さんは増員を再三求めたが、市が渋った―。「行き掛かり上の責任」で、田老で10年。黒田さんにとって、どんな10年だったのだろうと思う。そして、自身も被災者となった9年目の大災害。震災後の1年、何を考えながら患者と向き合ってきたのか。
3月末で田老を去る。現職所長として最後の講演会。多くの方にぜひ聴講頂きたい。(足立智和)