「しあわせの歌」

2012.09.08
丹波春秋

 「しあわせの歌」。1950年代半ばから60年代初めにかけてよく歌われた歌だという。「しあわせはおいらの願い 仕事はとっても苦しいが 流れる汗に未来を込めて 明るい社会を作ること…」という、今では何だか気恥ずかしいような歌だ。▼この歌は55年、電気産業労働組合が公募した組合歌入選曲で、フランキー堺、左幸子主演で映画にもなったらしい。中小企業の社員旅行のバスの中で歌われるなど、多くの若者が歌ったそうだ。明るい社会どころか、自分の未来図さえ描けない若者が少なくない現代と比べ、隔世の感が深い。▼本紙7面掲載の講演録にもあるように、15―24歳の非正規雇用者比率は3割を超えている。雇用環境の悪化は深刻な問題だ。80年の非正規雇用者比率は20%だが、2011年には35・4%に増加。わが丹波地域の有効求人倍率も0・70倍(今年7月)と、求職者1人に1件の求人もないという状況が長く続いている。▼講演録に、若者の非正規化は社会保障制度の崩壊を招くとある。若者にとどまらない雇用の悪化は、さらに景気を冷え込ませ、自殺の増加や生活保護の増加など、社会不安の増大につながっていく。消費税率の引き上げによる景気への影響も懸念される。▼若者が「しあわせの歌」を歌えた時代は幸せだったのだと思う。(Y)

 

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