奇祭「蛙おどり」

2013.10.10
未―コラム記者ノート

 先週末、わが町、篠山市今田町の住吉神社で秋の祭礼があった。この祭りの宵宮に行われる「蛙おどり」と呼ばれる神舞は、県の無形民俗文化財の指定を受けており、篠山市の三大奇祭の一つにも挙げられている。
 蛙おどりはいわゆる田楽で、締太鼓と竹の短冊を88枚綴ってこしらえた「ビンザサラ」を楽器として用いる。踊りの内容は、米を収穫している模様を表現した「惣(そう)田楽」と、田んぼに舞い降りたツルが豊作に感謝し、舞いを披露する「いず舞」の2種類。
 とっぷりと日も暮れた午後7時半ごろから始まり、1時間ほど続く。秋の虫たちの合唱が響く境内に、踊り手たちの「ヘーツ、ヘーツ」や、踊りの名の由来ともなった「カエロ、カエロ」という意味のよく分からない低く唸るような声が響き渡る。見物人が集まっている舞殿から少し離れ、踊り手たちの姿も見えない境内の片隅に一人移動し、その声だけを聴いていると、神社というシチュエーションと相まって、日頃はまったく感じない「何か」の気配を感じ、ぞくっと鳥肌が立った。なるほど、奇祭と呼ぶにふさわしい。(太治庄三)
 

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