神、人、自然

2013.10.12
丹波春秋

 13世紀から18世紀にかけてヨーロッパでは、「動物裁判」なるものが行なわれた。人や家畜を殺傷し、畑や果樹園を荒らした豚、犬、牛などをはじめ、小動物も裁かれた。▼農作物に被害を与えたネズミには退去命令が下され、ブドウ園を荒らした毛虫には「6日以内に畑から退去せよ」との判決がおりた。裁判だから弁護側もいれば、検察側もいる。弁護側が「動物も人間と同様に神がつくったもの」と論じると、検察側は「人は、神からすべての生きものを支配する権利を与えられている」と反論した(池上俊一氏『動物裁判』)。▼西洋では、自然界は人間のために存在するものであり、神―人―自然という序列があった。動物裁判の背景にある思想だ。それに対して日本では、神と人、自然の3者に序列はなく、融合していた。▼篠山市立歴史美術館で今、特別展「神と獣の棲むところ」が開かれている。猿や鹿、猪などを描いた掛け軸などを展示し、動物を神の使いとしてあがめた先人の考え方を紹介している。▼私の住む村には、猪や鹿を捕えた者に「ほうび」を与えることを明記した江戸時代中期の古文書がある。ほうびを与えるというのだから、農作物を荒らす猪や鹿によほど業を煮やしたのだろう。神格化する一方で、害獣として現実的な対応もとる。興味深い底の深さだ。(Y)

 

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