シカに思う

2013.11.21
未―コラム記者ノート

 篠山から実家がある京丹波へ抜けるには、どのルートを通っても峠を越えなければならない。道中、ほぼ確実に彼らと遭遇する。驚くほどの巨体、すらりと伸びた脚、つぶらな瞳。シカである。
 一度の往復で目撃する頭数は平均5頭。多くの場合、田や山際の広場で集合している。角がないメスばかりの時は、婦人会かなぁなどと想像する。
 狩猟が解禁されて追われる身になっているが、そんなことはこれっぽっちも感じさせない堂々たる姿だ。
 有害鳥獣といわれて久しい。育てた作物を片っ端から食べて回るのだから、人間としては有害と言うシカない。
 一方で春日神社に代表されるように、古来、神聖な動物としても崇められてきた。そんな展示物を集めた特別展が24日まで篠山市立歴史美術館で開かれているので、興味がある方はぜひ。
 神聖から有害まで。時代によって180度違った視点で見られるシカたちは、今、どんな思いでいるのだろう。
 ヘッドライトに照らされたシカは、口をもぐもぐと動かして山へ消えていった。遠くでギョーンと鳴く声がした。(森田靖久)
 

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