澤田八幡宮 (篠山市澤田)

2014.12.20
中井一統特集

 平安時代創建。紀元前後、この地は沼沢池であり、地名の澤田がその証である。出没する大蛇を沈めるため、 村人は鱧(はも)を用いて祈願したのであろう奇祭が、「鱧切り祭」 である。
 整備の行き届いた境内をゆくと、 拝殿の向拝の左右向き合った阿吽の竜、 その上部の竜2頭、 さらに兎毛通しの鳳凰がまず人目を引く。 木鼻には唐獅子と獏、 飛龍も見える。 社殿の周りは、 彫り物のオンパレード。 鯛、 亀、 虎、 鹿、 兎、 鷺、 山鳩、 中国の仙人など、 とりわけ手挟みの鸛(こうのとり)は、 今まで見てきていない珍しいものだ。
 脇障子には、 5代目中井丈五郎正忠、 6代目中井文五郎正貞、 後の中井権次橘正貞の銘が彫ってある。 1800年初期の制作と思われる。 正忠50―60歳代、 正貞は元服前後の20歳ごろではなかろうか。 ともあれ、 脇障子の彫り物とその銘は、 2人のコラボレーションの秀逸である。

元高校教諭 岸名経夫

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