安保法案

2015.06.03
丹波春秋

 ベトナム中部の海辺の町に行った際、コバルト色のきれいな海を何と言うのか、ガイドに尋ねた。「僕らは学校で『南シナ海』と教わったが」と話すと、顔をしかめて「とんでもない、これはイースト・シー(東海)だよ、イースト・シー!」。▼「なるほど。日本と韓国の間にある海も、僕らは『日本海』と呼んでいるが、韓国では『東海』と言うらしいよ」と言うと、苦笑していた。▼中国がベトナム、フィリピンなどと領有権を争う南沙(スプラトリー)諸島付近で岩礁を埋め立てて軍艦のような人工島を作り、周囲12カイリを「領海」と主張し始めた。承服できないアメリカは軍事パトロールを辞さない構えだ。▼万一、中国が一帯の貨物船やタンカーの航行を遮った場合、軍事衝突の可能性が従来になく高まる。安全保障関連法案が通ると、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」という3要件の1つにみなされるのかどうか。仮定の問題を断定は出来ないが、自衛隊にリスクが高まることだけは明白である。▼中国の横暴を抑止することは不可欠だが、日米が一体化して真っ向から対抗するのか、もう少し違う角度からの方策を見つける努力をするのか。それにしても、日中の首脳会談すら満足に出来ない状況を解決することの方が先決問題だろう。(E)

 

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