名脇役

2015.08.20
丹波春秋

 NHKの朝ドラでは思わぬ名脇役を発見する。最近では「あまちゃん」の片桐はいり、「ごちそうさん」のキムラ緑子だが、今放映中の「まれ」では、民宿を営む田中裕子の夫で、海水をまいて塩を作る桶作元治役の田中泯。▼筆者より1歳下だが、顔は渋くて精悍、体つきがしなやかで、座っていても背筋がしゃきっとしている。老年らしい威厳も備え、共演の幼友達役、元木枯し紋次郎の中村淳夫より余程恰好いい。▼「彼の映画デビューは『たそがれ清兵衛』(2002年)」と聞いて驚いた。主役の真田広之に激闘の末、討ち果たされる剣客を演じている。筆者も観たが、不運な男の汚れ役だったので、ただ気味が悪い印象しか残っていなかった。▼改めて観ると、暗い部屋での斬り合いの中で、やはりうらぶれた風貌が浮き彫りになるが、さすがに身のこなしは軽快で、声がなかなかよく通る。冒頭のキャストの字幕には真田とヒロイン宮沢りえの次に田中が登場し、山田洋次監督がこの役を相当重要視していたことをうかがわせる。▼田中の本職は「ダンサー」。クラシックバレーやモダンダンスを学び、自然農法で農業をしていたこともあるといい、独自の踊りを編み出しているそうだ。相当鍛錬を積んだことだろう。真似は出来なくとも、少しでも近づきたいと思うのだが…。(E)

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