お勧めの本

2015.11.12
丹波春秋

 コケブは幼時に母親と死別し、家族内の小母さんのもとですくすくと育った。やがて独立し、他の若者たちと共に修行の旅に。そして一段とたくましくなって村に戻り、一家を構えるリーダーとなって家族は20人以上に発展。しかし複数の妻たちにはまんべんなく気遣いが要るし、その座をねらってくるよそ者もいて、決して心休まる日々ではない。▼エチオピアの断崖の高地に住むゲラダヒヒの社会を描いた「河合雅雄の動物記1ゲラダヒヒの星」は、同氏が半年間、現地で彼らと一緒に暮らした観察による物語。▼それは一夫多妻制の家族「ユニット」と、いくつか集まった村のような「バンド」から成る重層社会で、バンドに縄張りはなく、かなり自由に行き来し合う。リーダーの座を争う雄同士の対決は熾烈だが、基本的には無駄な争いを避け、仲良く暮らしている。▼昨年完結した動物記全8巻(フレーベル館)は他にも「ひとりザルのマックとフータ」、「大草原のウサギとネコ」、「カワウソ流氷の旅」など、多種多様の動物たちの生態に興味が尽きない。▼動物にもあるのではと思われる感情が人間のように表現され、正確な観察眼に基づいた自然科学の手法を文学的に補強している。読書週間は終わったが、春秋子はこのシリーズが「お勧めの本」だ。(E)

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