宗教観

2015.11.26
丹波春秋

 15年前、トルコに旅行した際、大学で日本文化を勉強したという女性ガイドに「日本人が世界に最も自慢できることの1つは、宗教観だ」と話した。▼「私達には唯一絶対の神はいない。山川草木、自然界のすべてに神様がいる。そして正月は神道の神社、盆は仏教の寺に参り、クリスマスにキリスト教会に行く。良い加減と言われるかもしれないが、宗教にはそういう寛容さが大事なのでは」。彼女も「全く同感です。トルコ人も日本人を見習いたい」と相槌を打ってくれた。▼その頃、トルコはイスラム圏の中では戒律が緩やかな国で、飲酒は自由、繁華街で見かける若い女性の多くはスカーフをかぶらず、ジーンズやスカート姿だった。▼しかし現エルドアン政権は昔の「オスマン帝国」を復活させようと戒律の強化を進め、やはり「ペルシャ帝国」の復権をめざす隣国イランと覇を競う。その狭間で無法地帯と化したようなイラク、シリアに割って入ったのが、近代文化を完膚なきまでに否定するIS(イスラム国)だ。▼古代の西アジアの陶芸・工芸品などを見ていると、中国やギリシャ・ローマ風の衣装の男女が東西様々に登場、日本の法隆寺のとそっくりなものまであって、実におおらかな気分にさせられる。人類は文明の進歩爛熟と共に退歩しているのかも。(E)

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