芸に遊ぶ

2015.11.07
丹波春秋

 好季節の秋はイベントが多く、文化芸術関連の発表も多い。たとえば、篠山のメロマン室内管弦楽団が結成50周年演奏会、兵庫陶芸美術館で手作り陶磁器人形教室が作品展、植野記念美術館で美術団体「グループT」の作品展…。これらはいずれも前号の丹波新聞に載った記事だ。▼1回の新聞にもこれほどの情報が載る。文化活動に親しんでいる人が丹波に多くいることがわかる。結構なことだ。人の生き方を探究した孔子も、人として完成するためには「芸に遊ぶ」ことが大切だと説いているのだから。▼道と徳と仁。孔子は、この三つの要素を持った人になるように説いたが、それだけでは物足りないとした。この三つだけを求めていては、近づきがたいような堅苦しい人に仕上がってしまう。幅のある人になることが肝要で、そのためには「芸に遊ぶ」ことだとした。▼文筆家の相馬御風は、幅のある人のことを「人間としてのうまみ」という含蓄のある言葉で表現し、「なんらかの点で芸術的教養のある人でなくては、本当の人間としてのうまみは出てこない」と書いている。芸の世界に遊び、教養を身につけたいものだ。▼とはいえ、芸に遊ぶことだけに没頭し、道も徳も仁にも無関心を決め込んでいては、孔子先生から「小人(つまらぬ人)」と叱られそうだ。(Y)

 

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