人間蛆虫論

2015.12.26
丹波春秋

 NHKの朝ドラ「あさが来た」に福澤諭吉が登場した。武田鉄矢演じる諭吉を見ていて、諭吉本人が気に入っていたという持論「人間蛆虫論」を思い出した。▼諭吉によると、宇宙の中にある地球というのは大海に浮かぶ芥子の一粒のようなもの。人間は、この芥子の一粒に生まれて死ぬだけの存在に過ぎない。宇宙という広大な視点から見れば、人間は無知無力で見る影もない蛆虫のごときものだ。▼そう論じた上で諭吉は、蛆虫にも蛆虫なりの本分があるとした。子孫のことを考え、公益を考え、ひとつの過失もないように心がけるのが蛆虫の本分であり、万物の霊としての人間が誇れるところだとした。▼以上が「人間蛆虫論」だが、石川啄木に言わせると、そんな万物の霊である人間をあざ笑った動物がいる。啄木は、この動物にこう言わせている。「人間は憐れむべきかな」「人間ほどこの世に呪われるべきものはあらず」。▼2015年が終わろうとしている。この1年の国内外を振り返ってみると今年も、蛆虫としての本分をおろそかにした出来事が多かったと嘆かざるを得ない。テロ、紛争、人災、殺人、大企業の不祥事…。人間はまさしく呪われた生きものなのか。▼人間をあざ笑った動物とは、来年の干支であるサル。人間は、来年もサルに笑われるのか。(Y)

 

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