涙活

2016.01.23
丹波春秋

 前号の丹波新聞で「涙活」という言葉を知った。記事によると、泣くことでストレス解消を図るもので、近年、ブームになっているという。「婚活」「就活」などをもじった造語なのだろうが、泣くことは心にいい作用をもたらすことを人は古くから心得ていた。▼「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉でおなじみの寺田寅彦に、「何故泣くか」(昭和10年)という小論がある。この中で寺田は、「泣くという動作には常にもっとも不快不安な緊張の絶頂からの解放という、消極的ではあるが、とにかく一種の快感が伴っていて」と書いている。「不快不安な緊張」は、ストレスに置き換えられよう。▼この小論は、芝居を見ながら女も男もこぞって泣いている光景の記述から始まる。泣きたいために忙しい中を繰り合わせ、とぼしい小遣いを都合して入場している観客たち。そこまでして泣こうとするのは、人の「本能的生理的欲求」であろうと寺田は推察する。▼泣くことでストレスから解放され、精神を浄化したい。それはもともと人に備わった欲求であり、ほかの動物には見られない人の特権なのだ。寺田は、その特権を有効に活用しようと推奨する。▼涙活は、「泣く」という特権の活用を言葉として明確にしたものと言える。ストレス社会の現代、大いに涙活したい。(Y)

関連記事