三上

2016.03.19
丹波春秋

 昔から、いいアイデアは「三上」で生まれると言われる。三上とは、今なら車中の「馬上」、ベッドの上の「枕上」、トイレの中の「厠上」。本日付1面の「ひと」欄で登場願ったさとう社長の佐藤総二郎氏はそのことを心得て、筆記用具とメモ用紙を三上に常備しておられるという。▼湯川秀樹博士の中間子の理論はベッドの中で生まれた。学校に出かけようとしたが、台風のため風雨がひどく、家に引き返し、ベッドに寝転がった瞬間に頭に火がともり、中間子理論を発見した。▼三上にまつわる話は他にもあるが、アイデアが生まれるのは三上だけとは限らない。数学者の岡潔氏は耳掃除の最中に発見をした。妻と口論をして家を飛び出し、行きつけの理髪店で耳掃除をしてもらっているとき、数学上のある事実に気づき、証明の隅々までわずか数分でやってのけた。▼もちろん三上にいたからといって、ひらめくわけではない。前提として身もだえするほどに思索を積み重ねていることが必要だ。それがあって初めてひらめく。深層心理学ではこれを「創造的退行」というらしい。とことん考え抜く。そして緊張の糸がほころんだ退行の場面で発見をする。▼佐藤社長は「四六時中、仕事のことを考えている」という。創造的退行の前提条件であるが、見習うべき姿勢だ。(Y)

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