里山工房くもべ

2016.04.09
丹波春秋

 前から訪ねたかった篠山市の「里山工房くもべ」を先ごろ訪ねた。6年前に閉校になった雲部小学校の校舎を再生した施設だ。ひと昔以上前、取材でしばしば訪れた校長室は地元野菜などの直売所に変わり、職員室はカフェに様変わりしていた。▼カフェでは、子どもが使っていた机やいすを再利用していた。壁には職員室当時の黒板がかかっており、閉校時の集落ごとの児童数や家庭数が書き残されていた。ここでは時間が閉校の時点で止まっていた。過去に引き戻される思いがした。▼昔から引き継がれたものの中には、物語が伝わるものがある。子どもたちが学び、遊び、にぎやかな声が響いていた校舎。過去の記憶がくっきりと刻まれ、子どもたちの織り成した物語が感じ取れる。▼過疎化、少子化の波にのまれ、雲部小学校は閉校になった。その校舎が今、地域のにぎわいを創出する施設へと再生された。時の流れは学校を閉校に追いやったが、未来へと向かう時の流れに即応するため、閉校の校舎に新たな命が吹き込まれた。そこには未来への志向がある。▼「里山工房くもべ」には、郷愁を感じる過去、明日の地域を感じる未来がある。過去と未来という時間軸が重なり合っている。丹波地方にはこうした施設がほかにもある。それもまた丹波の魅力だろう。(Y)

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