77年前の今頃、昭和15年2月2日のこと。但馬出身の政治家、斎藤隆夫は歴史に残る国会演説をした。反軍演説である。日中戦争に対する政府の方針をただし、聖戦の美名に隠れて「国家百年の大計を誤ることがあれば、現在の政治家は死しても、その罪を滅ばすことはできない」と叫んだ。▼斎藤は国会から除名され、演説は議事録から削除。さらに斎藤には脅迫が続いた。自決用の短刀が送りつけられ、斎藤は暗殺を覚悟した。窮地にあって、斎藤は自分の思いを漢詩にしたためた。▼「吾が言は即ち是れ万人の声/褒貶毀誉は世評に委す/請う百年青史の上を看る事を/正邪曲直おのずから分明」。世間の評価は自分の知るところでない。百年後の歴史の上を見て、自分が考え、信じるところを鮮明にするのが政治家の使命である。そんな気概が伝わってくる漢詩だ。▼今、日本だけでなく欧米でも大衆に迎合する政治のことをいうポピュリズムが台頭している。大衆の情緒や気分に訴え、歓心を買い、大衆の人気を得ることに腐心する政治スタイルが支配的になりつつある。大勢を向こうに回し、命がけで信念を貫いた斎藤とは対極にあるスタイルだ。▼卓越した歴史観や世界観を持ち、長期的な視野で判断し、右顧左眄することないリーダーが理想なのだが…。(Y)