「ミャンマー野球界の父」と呼ばれる人にヤンゴンで会った。同地に20年以上住む元国連職員の岩崎亨さん(61)。17年前、同国では誰もしたことのなかった野球の選手を集め、グラウンドも手作りしてナショナルチームを作り上げ、東南アジア大会で4位まで進んだ。▼根は素直だが、家庭に様々な問題を抱え練習に来ることさえ困難な若者達に夢を持たせ、野球を通して人間教育することが大きな目的だったが、「太平洋戦争の日本軍による“負の遺産”」に気付き、未来に向け“正の遺産”を構築したいと思った。▼雨期に草ぼうぼうになったグラウンドを整備しながら「ここで戦死した巨人軍の吉原が見てくれているように感じた」とも。▼08年からは妻ひとみさんと共に私立の幼稚園・小学校も営む。児童は120人。ミャンマー人、日本人、その他の外国人がほぼ同数の幼稚園では5カ国語が飛び交い、どの言葉も皆驚くほどわかるし話せる。「特定の母国語と他言語という認識がない幼児の方がいいのです」とひとみさん。ゆくゆくは中学・高校も計画。▼活動には日本からも多方面のネットワークを通じて支援を受ける。大半が仏教徒でとても優しいミャンマーの人達。歴史認識をしっかり持ち、彼らに溶け込んで国際人を育てようとする邦人の姿に心打たれた。(E)