いざさらば

2017.03.11
丹波春秋

 卒業式のシーズンを迎えた。篠山東中学校でこのほど行われた「3年生を送る会」で、シンガーソングライターの川嶋あいさんの“サプライズライブ”があった。校長先生からの依頼の手紙を受けて実現したライブ。卒業ソング「旅立ちの日に…」で知られる川嶋さんの歌声は卒業生の心にしみたことだろう。▼今は知らないが、卒業ソングと言えば「あおげば尊し」が定番だった。歌詞は3番まであり、いずれも「いざさらば」で終わる。 ▼この 「さらば」 は、「さようなら」と同様にもともと接続詞である。「さらば」は「さあらば」、「さようなら」は「さようならば」ということ。前の事柄を受けて、次の行動や判断を起こそうとするときに使うもの。今に至るまでの過去のことを総括し、次の新しいステージへ踏み出す際の別れの言葉だ。▼「人生別離に足る」という漢詩の一節を、作家の井伏鱒二は「『さようなら』だけが人生だ」と訳した。人生に別れはつきもの。別れを繰り返すことで、生きることの妙味を知る。中国の詩人、蘇東坡にも「人生、別離無くんば、誰か恩愛の重きを知らんや」とある。恩愛とは情愛の意。▼学び舎でのさまざまな体験や出会いを総括し、次のステージへつなげる。「いざさらば」を繰り返すことで、少年少女は大人へと脱皮していく。(Y)

関連記事