篠山出身の臨床心理学者、河合隼雄氏の子ども時代の話。6人兄弟のうち誰かが誕生日を迎えると、家族で春日神社に参った。そのあと、近くのお菓子屋で誕生日の者に10銭、それ以外には5銭が渡され、自由にお菓子を買えたという。兄弟にとって誕生日は待ち遠しい日であり、一家の祭りでもあった。▼著作を何冊か読み、仕事柄、出会う機会もあった河合氏から多くのことを教わった。先の話を聞いたとき、河合氏は続けて「お祭りに心が躍る、感動するということは、子どもの心の成長にものすごく大きいことです」と言われた。▼しかし経済的に豊かになり、子どもに物を与えることが多くなった現代。誕生日を迎えた時の河合氏の気持ちに心底、共感できる子どもは今、どれほどいるだろうか。 ▼河合氏は 「昔は、 毎日、ご飯が食べられるだけで親の愛が子どもに伝わったが、今は毎日のご飯くらいでは親の愛を感じられない」とも言われた。だからこそ河合氏は、現代においては家族関係の仕事は大事業となったと説かれた。▼家族を営むことが大事業となった中で発生したさまざまな問題に河合氏は対応され、多くの教えを残された。そんな氏の功績を紹介する記念館が今秋、篠山チルドレンズミュージアムにできるという。没後10年にふさわしい事業だ。(Y)