法事

2017.04.24
丹波春秋

 私事だが、きょう、我が家で33回忌の法要がある。さて、この法要だが、一説によると、徳川幕府の官僚が考えたものらしい。寺は、幕府の政治を担う重要な部門だったが、封建経済の矛盾が寺院経営にもあらわれ、寺の運営が難しくなった。そこで幕府の体制温存のために法要を思いついた。▼葬式で終わりにせず、1周忌、3回忌、7回忌…と法事をやることで、寺の収入源を確保したというわけ。この説の通り、法事の起源に権力者の思惑があったとしても、法事は一般庶民の間にしっかりと根づいた。それは庶民の「先祖崇拝」の信仰心に法事がマッチしたからだろう。▼キリスト教徒は神に祈るが、亡くなった近親者に祈ったりしない。欧米では一人ひとりが神に直接つながっていると考える。先祖代々の命が受け継がれて自分があるのではなく、先祖は自分と横並びの人間という感覚。対して日本人は仏壇に先祖の霊をまつり、崇拝する。▼ドイツ出身の僧侶、ネルケ無方氏は欧米には見られない日本人の宗教心にふれ、「日本人にとっては、キリスト教徒の神の役割を先祖が演じているのであろう」と指摘する。先祖崇拝の観念は、日本に仏教が伝来する以前からあり、日本人の宗教心の核になっているといわれる。▼きょうは、先祖を偲ぶ一日としよう。(Y)

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