東北でよかった

2017.05.03
丹波春秋

 「大震災の発生がまだ東北でよかった」。―ひんしゅくを買った今村前復興相の発言に対し、三陸新報(宮城県気仙沼市)には「最近こちらへ視察に見えた時『がんばれ』と声をかけてくれたが、うわべだけだったのか」など読者の怒りや悲しみの声が、抑え気味に書かれていた。▼発言以来、インターネットのツイッターに「東北でよかった」という投稿が相次いでいる。「自分が生まれ育ったのが…」という意味で、雄大で美しい山や茜色の朝日の海の風景写真が溢れ、東北人の誇りがしなやかに示されているようだ。▼筆者が前の新聞社の福島支局に赴任の頃、明治創刊の仙台の有力地方紙「河北新報」の紙名の由来を知った。薩長政府から「白河以北一山百文」(白河の関=福島県=から向こうは一山百文で買える)とさげすまれたのに反発したという。▼「薩長土肥」に連なる佐賀県選出の今村氏が「東北の、あっちの方」と言ったのは、まさにこの感覚によるのだろう。しかし「あっちの方」と思う気持ちは関西人にも根強いのではないか。▼震災以後、被災地への支援ボランティアやツアーなどにより、その距離は幾分縮まったように思えるが、まだまだ積み重ねが必要だ。九州についても同様。小社では読者を募り、これまでの東北に続いて来月、熊本へツアーする。(E)

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