第九

2017.06.08
丹波春秋

 鳴門市でのベートーヴェン第九交響曲演奏会に出演。ドイツから来たトーマス・ドーシュ氏の指揮、徳島交響楽団の伴奏で600人の仲間と共に歌った。▼鳴門は1918年6月に「第九」が日本で初めて演奏され、世界1第九好きの日本の“メッカ”となっている。今年も筆者の属する「北はりま」のほか北海道から鹿児島まで全国60団体、さらにアメリカやドイツからも参加があった。▼鳴門が初演の地となったのは、第1次大戦時、中国の青島で日本軍に敗れたドイツ兵達が、ここにあった俘虜収容所に連れて来られたことに始まる。会津出身の松江豊寿所長は敗者の気持ちがよくわかったのか、俘虜達の自由を大いに尊重し、スポーツや文化活動を認めた。▼所内では日刊の新聞が発行され、地元住民との交流も進んで、パンや畜産などの技術指導がされた。その話は「バルトの楽園」という映画に描かれ、松平健が所長を演じた。▼収容所は3年で閉鎖され、俘虜達は帰国したが第2次大戦後、鳴門市は「ドイツ館」を建設し、日独交流が復活。全国から合唱団を集めた演奏会も36回を数えた。初演から100周年の来年は中国にも呼びかけ、さらに国際的になるという。ベートーヴェンの「すべての人類が兄弟に」の精神が、日本の地方都市から世界に広がっている。(E)

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