JR赤穂線の播州赤穂駅の2駅先に「備前福河」という駅がある。高校生の通学用らしき自転車が並ぶ小さな建物。所在地は一見、岡山県と思われるが、違う。兵庫県最西端の「赤穂市福浦」。構内の説明板に「昭和30年の開業時は『岡山県和気郡福河村』だったが、38年に福浦地区は赤穂市に越県合併。しかし駅名はそのまま残った」。
おしゃれな服装の86歳の婦人が1人、赤穂行きの電車を待っていた。「住民の大半が赤穂につくことに賛成したんです」。西隣の日生町(現備前市)までは数キロ先の険しい峠を越えなければならず、ほとんど平地でつながっている赤穂に行く方が便利という。
赤穂から千種川をさかのぼって1時間あまり行った所に、鳥取県につながる智頭急行線の石井駅があった。兵庫県佐用町。峠を越えた岡山県美作市にある「宮本武蔵」駅の1駅手前。
ここ石井地区も明治22年の町村制施行時は「岡山県吉野郡石井村」、つまり美作に属していた。同29年に兵庫県佐用郡に編入されたのは、やはり地形的な理由かららしい。付近の家を何軒か訪ねて聞くと、古い話だが住民にはちゃんと伝わっているようだった。
兵庫県は5つの国(丹波、但馬、播磨、摂津、淡路)から成ると言われるが、実は備前、美作も一部あって、正確には7つであることを確かめた。(E)