地獄絵

2017.08.24
丹波春秋

 植野記念美術館で開催中の中島潔展の地獄絵は、鬼たちの表情がおかしくも、やはり恐ろしい。でも5枚最後の「阿鼻地獄」の後方に慈母のような顔の地蔵菩薩が現れ、阿鼻叫喚の際限のない苦しみを味わわされて来た女人がその手に抱かれ、ぐったりと、しかしすっかり安堵した表情にひかれた。

 寺などに伝わる地獄絵には大抵最後にこの菩薩が現れる。仏教では地獄に落ちてからも、苦しめられはしてもやがて悔い改めれば救われるという。

 中島さんがこれら地獄の絵になぜ「心音図」と名付けたのか、「絵描き 中島潔地獄絵一〇〇〇日」という制作の様子を追い続けた本(西所正道著)で理解できた。

 京都の六道珍皇寺にある、修羅道、餓鬼道、畜生道などと地獄の様子を描いた「熊野観心十界図」に「心」の字が大きく書かれている。誰もが心の中に地獄も極楽も作る要素を持つことを示すという。

 所蔵の地獄絵を中島展に特別出展している青垣町・高源寺の山本祖登住職が子供たちに向けて「地獄の部屋をのぞいたら、円卓にあるいっぱいの御馳走を長い長い箸で取らねばならず、全然食べられなくて皆げっそりやせている。ところが極楽の部屋では同じ長い箸を、向かいの人に差し出し合って皆がなごやかに会食していた」と講話した。これも「心」に通じる話だろう。(E)

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