12畳の和室に寝転んで天井を見上げ、2メートル四方に切ってある穴を眺めていると、スライド式の屋根が静かに移動し、青空がぽっかり。多様な形の秋の雲が来ては去り、赤とんぼが高く高く舞い飛んでいる。LEDの柔らかな照明に包まれた空間は、時間の経過とともに表情を変え、いつまで眺めていても飽きない。
ここは新潟県十日町市。遠くに八海山、下方に信濃川を見渡す丘に建てられた「光の館」。日本の各地に作品を残す“光の芸術家”ジェームズ・タレルが、この地で開かれる「大地の芸術祭」に以前に出展した。
地元の古民家をモデルにした館は我々が忘れていた、障子や明り窓に移ろう光や陰を蘇らせる。この部屋を初め色々な仕掛けをした3つの部屋に宿泊可能で、泊まること自体が作品の一部となるが、いつもほとんど満室という。
「人間は自然に内包される」がコンセプトの芸術祭は3年に1度開かれ(次回は来年)、初秋の50日間、200の集落で廃校や棚田を使っての展示に50万人が訪れる。普段の年の晩秋にもプレイベントが行われ、紅葉真盛りの里はどこも賑わっていた。
2004年に大震災に見舞われた中越の山間地帯の人々はたおやかで、訪れる者の心を温めてくれる。丹波にとっても様々なヒントが込められた旅だった。(E)